水俣学プロジェクト3

2016年度

第3プロジェクト
戦略的研究基盤形成支援事業のうち第三班の研究事業計画「水俣学アーカイブスを通した知の集積と国際的情報発信拠点の形成」については、過年度の成果を踏まえて、研究事業を継続した。具体的には、下記の通り事業を実施した。
1. 水俣学研究センター所蔵資料データベース
  http://www3.kumagaku.ac.jp/minamata/database/
【新日窒労組旧蔵資料】
資料目録の細目録、目次番号の入力および、写真目録上に写真画像を追加する作業を継続して行った。新日窒労組旧蔵資料の写真目録化にあたり、水俣学現地研究センターにおいて、元組合員に依頼して撮影日時、場所、被写体等の情報等を「写真目録カード」に記載し、同定作業を従来通り継続して進めた。6万点以上におよぶ写真資料の同定作業は、写真資料に付加価値をつけ簡易検索を容易にするものである。今年度は、写真目録3500点、写真画像3138点を更新した。
【水俣病研究会蒐集資料】
水俣病研究会蒐集資料は、チッソに対する訴訟で原告弁護団を支援する目的で結成され、訴えの論拠と裏付けを提示するために一次資料の蒐集を行った研究会の資料である。資料は本学7号館に1968年以降のもの、熊本大学学術資料調査研究推進室(水俣病部門)に68年以前の資料が保管されている。2016年3月に熊本大学学術資料調査研究推進委員と協議し、研究者の資料アクセスが容易になること、災害危機管理が必要であるとの合意がなされ、2016年3月から熊本大学から68年以前の資料を借用し複写を行っている。4月に起きた熊本地震の影響で作業を一時中断したがおおむね順調に進行している。この作業は、『水俣病事件資料集』の続刊刊行に向けた取り組みとしても位置付いている。
【松本勉旧蔵資料】
松本勉旧蔵資料は、元水俣市職員で水俣病市民会議事務局長をつとめた方の資料群である。2016年11月には、文献資料1185点、書籍資料1714点、資料画像77点を公開した。資料画像でプライバシーに関わる部分には、研究上の観点から判断しマスキング基準に則りマスキングをかけている。
【鰐淵健之旧蔵資料】
鰐淵健之旧蔵資料は、本学事務局の倉庫に保管されていた資料を熊本地震後の復旧作業で職員が発見したものである。鰐淵は、熊本大学初代学長、熊本商科大学・短期大学の第三代学長を務め、1959年厚生省食品衛生調査会水俣食中毒特別部会を務めていた。資料にはチッソとの書簡、徳臣晴比古からの報告書などが含まれ一級資料である。本年度は文献資料75点の整理を終え、2017年6月に公開予定である。
【馬場昇旧蔵資料】
馬場昇旧蔵資料は、元衆議院議員、旧社会党書記長を務め、1973年7月の補償協定締結時には立会人となった方の資料群である。2年の目録化作業を終え、2017年8月に文献、書籍、物品資料を公開予定である。今後、写真資料は、元新日窒労組の組合員に撮影日時、場所、被写体等の情報等を「写真目録カード」に記載してもらい、新日窒労組旧蔵資料と同様に写真を資料として意味づけを行う予定である。
HP上のデータベースページ閲覧件数は、126353件であった。資料閲覧件数は、水俣学研究センター(熊本市)6件、水俣学現地研究センター(水俣市)24件であった。
2. 水俣学アーカイブ
  http://www3.kumagaku.ac.jp/minamata/marchives/
水俣学アーカイブスは、資料と映像をリンクしたアーカイブで、水俣学研究・資料文献データベースおよび映像資料を通して、水俣学の取り組みの一端が研究者以外へも理解が容易になるよう、記録・記憶の集積を視覚的に公開したものである。2014年12月8日からHP上で一般公開し、2016年5月にはアーカイブの英語版を作成し公開した。さらに2017年3月には「時空でたどる新日窒労組」の英語版を公開した。ホームページのページ別閲覧状況は、トップページに次いで水俣学アーカイブの水俣今昔5.55%、資料室利用2.81%、水俣略年表2.40%、データベース2.29%などでアーカイブを閲覧する人々が多かった。各ページ平均滞在時間は、水俣略年表3分2秒で最も長く、水俣今昔は23秒と短かった(グーグルアナリティクスによる)。水俣学アーカイブは、三菱財団研究助成「水俣学映像資料のアーカイブ化による水俣病事件研究の基盤形成」を2014年から受け、本年度で終了し最終報告書を提出した。
アーカイブのコンテンツは下記の通りである。
◎◎「証言」患者証言、共に闘う(支援者・研究者)
◎◎「歴史」水俣今昔、時空でたどる新日窒労組、水俣略年表
◎◎「自然」海辺の物語
◎◎「教育」伝える  子どもたちへ、現場をさるく、学校の現場から
◎◎「記録」新日窒労組8mmグループ
◎◎「未来」失敗の教訓を活かす
3. チッソ労働運動史研究会
学外の研究員を加えて、元従業員を招聘し、定期的に研究会を水俣現地センターおよび本学で開催した。本年度は、2017年度の『チッソ労使の労働運動・経営・民衆・社会史』の刊行にむけた研究会を開催した。研究員の分担は、通史を富田(佐賀大学)、労使関係・労働運動史を花田・富田・石井(大分大学)、経営史を磯谷(九州大学)、社会運動史を鈴木(法政大学)、民衆史・生活史を福原(大阪市立大学)、組合の健康調査分析が井上であり、研究会においてそれぞれが研究の進捗状況を報告し討論した。
なお、その一部は大原社会問題研究所雑誌、大学紀要、社会政策学会九州部会などで発表された。
4. 所蔵資料・書籍類
本学および現地センターの蔵書に関しては、蔵書の活用(閲覧、研究員のみへの貸し出し)ができる体制が整っている。
また、水俣学戦略的研究基盤形成支援事業の書籍予算に加えて、水俣学科研(研究代表:花田昌宣、基盤研究(B))、タイの公害研究科研(研究代表:宮北、基盤研究(B))、胎児性水俣病の福祉科研(研究代表:田尻雅美、基盤研究(C))、漁業と水俣病研究科研(研究代表:井上、基盤(C))、不法投棄に関する社会史研究(研究代表:藤本延啓、基盤研究C)より、水俣学研究用図書の寄贈も受けており、2016年度に登録された蔵書は217冊(寄贈図書152冊含む)になった。蔵書目録は内部用に作成されているが、貴重図書も多いことから公開を検討している。
なお、研究・調査の進展に伴い、種々の行政関係資料、訴訟関係資料、海外調査関係資料など多くの資料類を受け入れているが、これらは、コピー製本するにとどまっており、登録作業は行なっていない。それぞれの研究プロジェクトが一段落した段階で登録作業を行う予定である。また、寄贈資料に関しても受け入れている。
5. 寄贈資料
今年度、受け入れた資料は以下の通りである。
寄贈日:2016年 5月 9日 寄贈者:吉岡氏 資料内容:堀田宣之ヒ素中毒資料衣装ケース3点
寄贈日:2016年 5月13日 寄贈者:吉岡氏  資料内容:堀田宣之ヒ素中毒資料段ボール12点
寄贈日:2016年 6月23日 寄贈者:坂下氏  資料内容:県総評青年部、三井三池の寄せ書き2点
寄贈日:2016年 6月30日 寄贈者:緒方氏     資料内容:新日窒労組組合員章1点
寄贈日:2016年 8月20日 寄贈者:広瀬氏     資料内容:書籍『不知火:いま水俣は』8号1点
寄贈日:2016年 9月21日 寄贈者:篠倉氏     資料内容:本人論文、関連新聞記事、最終講義レジュメ18点
寄贈日:2016年10月 2日 寄贈者:飯尾氏     資料内容:『日本窒素肥料事業大鑑』ほか書籍段ボール8点
寄贈日:2016年11月29日 寄贈者:青木氏     資料内容:熊本県高等学校教職員組合の戦前からの資料段ボール150点
寄贈日:2016年12月 8日 寄贈者:倉本氏     資料内容:水俣市街地風景写真ネガ11点
寄贈日:2017年 1月12日 寄贈者:石牟禮氏  資料内容:新日窒労組関係 6点(VHS、激布、紙資料)
寄贈日:2017年 2月 2日 寄贈者:坂下氏     資料内容:新日窒労組関係 10点
寄贈日:2017年 2月15日 寄贈者:山口氏     資料内容:土呂区調査カルテ1点、原田正純作成のカナダ・ブラジルパネル30点
寄贈日:2017年 3月 3日 寄贈者:三森氏     資料内容:水俣病関連書籍 22点
6. 水俣病事件資料集編纂委員会
 水俣病事件資料集続刊を2020年3月に刊行するため、水俣病事件資料集編纂委員会を2015年3月に設けた。委員は、統括責任者・編者を花田、資料編纂顧問・編者を高峰武(客員研究員・熊本日日新聞)、資料収集指揮・編者を山本、編者を東島大(客員研究員・熊本県民テレビ)、井上、石貫謹也(熊本日日新聞)で構成し、アドバイザーとして富樫貞夫(客員研究員・熊本大学名誉教授、水俣病研究会)、有馬澄雄(客員研究員・水俣病研究会)に依頼した。本年度は、各自分担しても資料カードの作成を行うとともに編纂委員会を計9回開催した。

 

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